dreamfact0ryのブログ

映画を勉強中。物置として使う。由来はプリンスの没アルバムから。

脚本 『ブルー・スコール』

タイトル

 

『ブルー・スコール』

 

登場人物

 

三浦光作 ロック・スター。芸名、ミック。  

 

阿部   梶野のマネージャー。

総理   田中大二郎

プリシラ 梶野の愛人役。

 

デズ宮本   (ファンキー・ドリー)のリーダー。

ヨウ・ヒ   (ファンキー・ドリー)のベース。 

サー・ドレイク(ファンキー・ドリー)のドラム。

町山     〈パープルハウス〉のオーナー

 

ログライン

 政府によってロック・スターに仕立て上げられた男が、以前の自分を取り戻そうとする物語。

 

1 ブラック・アウト

 

三浦(M)「その夜、僕の背中に突然羽が生えた。それから、おれはロック・スターになった」

 

2 東京ドーム・ステージ 

 

   メインタイトル【ブルー・スコール】

 

三浦は、スピーディなエレクトリックロックにのって飾り立てられた羽をはばたかせながら登場する。後ろで流れている音楽にあわせて、適当に口の動きとギターを弾いているふりをして合わせているだけなのに、観客は熱狂している。

 

3 同・廊下

  三浦はファンクラブのメンバーを横目に、横柄に楽屋に入る。

 

4 同・楽屋

  三浦はギターを練習している。まったく弾けない。

  扉が開く、阿部がいる。

阿部「凄いな、疲れ知らずだ」

  ギターをおく三浦。不機嫌そうに羽が動く。

阿部「この後、総理と面会が入りました」

三浦「アフター・パーティーは?」

阿部「出なくてもいいですよ。『ミック、ドタキャンする!』って書かれても、あなたならいいネタになる。さあ、早く。外じゃもっとスターらしくふるまって」

  扉が閉まる。

三浦「スターらしく、ね」

 

5 同・外(夜)

  三浦が出てくると、群がるファン。それに羽を思い切り広げる。群衆は雷にうたれたように静かになる。

群衆A「静聴だ、静聴」

三浦「みんな、おれを信じろ! 審判の時が迫ってる! おれは太陽だ!太陽こそ神だ! 神は法であり国だ! 敵は外にいる! 総理を信じろ!」

群衆、熱狂し拍手喝采。

リムジンに乗る。

 

6 リムジン・後部席

プリシラ「ねえ、せっかくあなたと二人きりなんだから、しようよ。」

三浦「運転手がいる」

プリシラ「関係ないって。アルバム全部持ってるんだから。歌だって、ギターだって最高!」

三浦「モルヒネ打つのをやめてから言えよ」

プリシラ「あたし本当にファンなんだよ」

三浦「そうかい」

三浦は窓の外を眺め、苦笑いを浮かべる。

 

7 高級ホテル・部屋

  三浦、阿部は田中総理大臣と席を囲んで話をしている。

総理「良いぞ、ミック。君のおかげで素晴らしい支持率だ」

  三浦は黙っている。阿部、いぶかしむ。

阿部「ええ、全て総理のおかげです」

  総理が笑い、ワインを一気にあおる。

総理「そうだ、ミック。いつも君にいってもらっている口上があるだろ」

  三浦、うなずく。

総理「それに、ロシアを、〈プーチンを信じろ〉をいれてくれ」

阿部「どうして?」

総理「いま、北方領土の話が煩くなってきてね。私と彼は仲が良い。」

阿部「流石にそれは、前後の分と脈絡があいませんよ」

  総理は立ち上がる。

総理「脈絡などうでもいい! ミックならばできる。わたしのメッセンジャーなんだから。ミックが右と言えば、みんな右を向く」

  阿部の顔は汗であふれる。

阿部「はい、わかりました。言ってくれるな、ミック?」

三浦「いいですよ、総理。ですが…」

総理は座りなおして、微笑む。

総理「なんだね、なにが欲しい?」

三浦「質問なんですが?」

総理「一つだけならいいぞ」

三浦「僕の羽は偶然生えたわけじゃありませんね?」

阿部は不安そうに総理をみる。

総理「どうして?」

三浦「勘です」

総理「阿部、話してやれ。約束だからな」 

阿部「実は。無名の音楽経験のある奴を探っていたんだ、ミックとして活動できるような幽霊のような人物をね。君は顔と背がよかったし、元ホームレスの君を誰も知らない」

  三浦は阿部をじっと見た。

三浦「そこまで話してくれるなんてね。いつになったらこの仕事を辞められる?」

総理「質問は1つの約束だろう」

  阿部はため息をつく。

総理「そうそうそう。それは次会う時に言おう。まだまだお互いに知らないことがある」

三浦の顔は険しくなる。いまにも広がりそうな羽を抑えていた。

 

8 パープルハウス・外 (シーン7から 後日)

  裏通りにたたずむ、古めかしいライブハウス。壁に〈開演中 ファンキー・ドリー〉と書かれた手書きのチラシが貼ってある。

  

9 同・ステージ

デズ宮本とヨウ・ヒ、サー・ドレイクの三人が、パンクな曲を披露している。が、客側にはほとんど人がいない。

芳しくない面持ちで三人を見る、オーナーの町山。

 

10同・楽屋

  〈ファンキー・ドリー〉の三人と町山が話している。

デズ「頼むよ、明日だけでも」

町山「明日になったって人はこない! 池に糸クズたらしても魚はこないだろ」

デズ「来てたよ、明日はもっと来るようにするからさ。みんな仕事だっていってて…」

町山「おい、俺は同窓会を開いてやってるわけじゃないぞ」

デズ「頼むよ、明日、明日にはなんとかするって」

町山「できるわけないだろ! せめてボウフラでもいいから餌を探して来い!」

  扉が開く、三浦が立っている。羽はしおれ気味だった。

一同注目する

町山「大ミミズだ…」

三浦、眉をひそめる。

サー「よく戻ってきたな」

  ヨウは三浦と目を合わせる。

デズ「よせよ。よお、三浦」

三浦「久しぶり」

町山「なんだ、お前たちミックの知り合いか! なら明日ゲストで」

デズ「こいつはこないよ。それに明日は武道館がある」

三浦「よく知っていらっしゃる」

デズは少したじろぐ。

デズ「一度、世話をしてやると忘れられなくて」

ヨウ「ねえ、歌とか上手くなった?」

三浦「全部、口パク」

  ヨウは目線を下へ向ける。

ヨウ「そう…。ちょっと、トイレ」

  退室する。

サー「あれだけ特訓していたのに」

三浦「口パクでもわからないんだよ、連中は。俺に夢中だ」

デズ「お前じゃない、羽に魅かれてんだ。みんな奇形が好きだからな」

サー「なんでここに来た?」

三浦「通りかかった」

デズ「こんなボロい場所に?」

町山「おい、おれがいるんだぞ!」

三浦「〈ブルー・スコール〉が完成したか聞きにきたんだ」

サー「パクリにきたのか?」

三浦、首を振る。

デズ「一応な、でも上手くはまらない。なあ、三浦。お前は羽を手に入れてから変わった。いや、ぜんぶ失ったんだ」

三浦「作詞してるだけはあるな」

デズ「ああ、誰かから渡された台本を読んでるわけじゃない。お前と違ってな」

 一同、沈黙。

 

11同・通路(夜)

大股で歩いて帰ろうとする三浦を止める町山。

町山「明日、あいつらのライブ出てくれよ」

三浦「でれない」

町山「別の日でもいい」

三浦「嫌だ」

町山「あいつらだって一緒にやりたいって思ってるよ」

三浦の羽が少し動いて、足を止める。

三浦「そんなわけない。大体、おれは無能だ」

町山「誰がそんなこといった? あんたになにかあるから、デズもメンバーに入れたんだろ。それに、あんたの代わりに入ってる奴がいないじゃないか、それが証拠だ」

  ヨウが化粧室から出てきて、二人とはち合わせる。目元の化粧は流れ、鼻が赤くなっている。目線を決してあわせず、逃げ道をさがしているように見える。

三浦「ごめん」

  ヨウは通り過ぎっていってしまった。

三浦は羽をすくめて、再び歩き始めた。

町山「明日は十一」時までやってるよ!」

三浦が外に出ていくところを。町山は見送った。

 

12三浦の住む高層マンションのペントハウス 寝室(夜)

 眠っているプリシラを起こさぬようにそっと起きる三浦。

 

13同・リビングルーム(夜)

三浦は壁に張られた鏡に背中をむけ、羽を見た。そして、覚悟を決める。キッチンから包丁を、棚から布とモルヒネを取り出す。

モルヒネを打ち、右手に包丁、左手に羽の先を持つ。

三浦は包丁を勢いよくふりあげ、羽の根元を切った。半分切れただけで切れない。痛くはないはずなのに叫び声をあげる。

   プリシラが起きてくる。

プリシラ「た、大変! なにこれ! 病院呼ばなきゃ…」

三浦「呼ぶな、あいつらはくっつけようとする」

プリシラ「当たり前でしょ!」

三浦「頼みがある、切ってくれ」

三浦の傷口からは大量の血が流れている。

プリシラは手で目を覆った。

プリシラ「マジでグロい!」

三浦「痛くないから大丈夫だ、モルヒネつかってるから」

プリシラ「勝手にわたしの使ったの? 医者とか警察がきたらばれちゃうじゃん!」

三浦「そうだよ、だから切れ!」

プリシラ「わかった、わかった」

  プリシラは三浦から包丁を受け取る。とまどいながらも、握り締める。

プリシラ「逮捕よりマシ、逮捕よりマシ…」

  プリシラは思い切り三浦の羽にむかって包丁を振る。何度も何度も。片一方が切れると逆も同じように切る。終る頃には二人の周囲は血の池のようになっていた。

三浦「よし、布を巻いてくれ。強く、強く」

プリシラ「初めての共同作業がこれ!」

 

14パープルハウス・楽屋(夕方)

 〈ファンキー・ドリー〉の面々が出番を待つ。町山が駆け込んでくる。

町山「おい、たいへんだ!」

デズ「どうした?」

町山「ミックが急病だ!」

  デズは眼を丸くする。

ヨウ「それって、公表できないようなことがあったってことですか?」

町山「そうだよ、あいつ昨日は体調だけは良さそうだったからな」

サー「本当に急病かも」

ヨウ「きっと来る」

デズ「いや、来ない」

三浦「呼んだか?」

ヨウは跳ねた。

ヨウ「すごい、本当に来た!」

サー「そっくりさんだよ、羽がない」

デズとヨウと町山は落ち込む。

三浦は上着を脱いだ。一同は息を飲む。真っ赤に染まった布で背中は巻かれていた。

デズ「これで、またぜんぶ失くしちまったな」

三浦「いや、取り戻したよ。さあ、やろう!」

一同、笑顔になる。

デズは涙ぐむ。

デズ「なんだとこのやろう! リーダーは俺だ」

 

15同・ステージ

  ステージに立つ面々。フロアの数少ない客は、三浦をみて混乱している。しかし、町山はスマートフォンのカメラを回し始め、ネットで放送をしている。

三浦「みんな、おれは嘘をついてきた。歌はろくに歌えないし、ギターもろくに弾けない。それに日本は核を保有しているし、デモ行進があったときに5人死んだ。本当に申し訳ない。最後に一曲、おれが神でもロック・スターでもないことを証明するために歌う」

〈ブルー・スコール〉の演奏が始まる。歌う三浦。全く面白みのないパフォーマンスだが、再生数は恐ろしい勢いで伸びる。

  歌い終えると、フロアにいた数人からは拍手が起きる。全員、ステージにあがってくる。

町山「万歳! 五百万再生!」

サー「すげー!」 

客A「よく話したな!」

客B「アンチだったけど、ファンになるよ!」

ヨウ「本当に核があるの?」

デズ「そうだ、ほんとか?」

三浦「ああ、だから最期に歌おう! 1999!」

  全員で1999を歌いだす。

《FO》し画面が真っ暗になっても、1999はリフレインし続ける。

                             《終り》