dreamfact0ryのブログ

映画を勉強中。物置として使う。由来はプリンスの没アルバムから。

物語 『殺しのつづき』


物語 『殺しのつづき』

 

・登場人物

竹本聡  鬱憤を抱えた会社員。殺人鬼になる。

マコト  倒錯的ヘルス嬢であり、殺人鬼。

松本愛子 竹本の同棲相手。

東    刀剣マニア。

三池   弁護士。

捜査官  立てこもりの狂言に踊らされる。

刑務官  厳しくもユーモアを持った男。

 

 現代の日本。女性や老人を狙った関東地域で不特定に起こる猟奇連続殺人事件が発生していた。その手口はまず後ろから相手を一突きにして動きを止めてから、意味深長な紋様を刻むというものだった。

 目撃者によると犯人は細身で小柄、ホラー映画に出てくる殺人鬼の仮面を被っていた。

 警察はやっきになって犯人を探している。 

 主人公、竹本聡は凡庸な一会社員であったがいつか誰かを殺して鬱憤を晴らしたいと考えている。ホラー映画や小説に目がなく映画で人が死ぬシーンのクリップを観て飯を食うのが趣味だった。

 そんな彼にも松本という彼女はいたが、あまり良好ではなく一方的に話しかけているも同然の状態であった。

 ある日、竹本が刀剣マニアの友人東の家を訪ねる。オタク同士まったく噛み合わない会話をした後、ナイフを買う。「映画の『スクリーム』みたいだ」喜んだ竹本はドンキホーテでマスクを買い、最近不満げな彼女にサプライズをしようとする。

しかし、深夜に犯人に近い風体をしていた竹本は警官に職務質問をされる。荷物の中にはもちろんナイフとマスクが入っていた。

 竹本は重要参考人として連行される。

 警察署で、刑事は竹本に尋問をするも怒るだけで一向に捜査が進展しない。松本は「殺人の動画を観るのが好きだった」、東は「いきなり訪ねてきてナイフを買いにきた」と証言したために疑いはより強まる。

それを聞いた竹本は塞ぎこみ、黙秘権を行使し始める。弁護士からは全くやる気がみえず、「無実なら警察がより詳しい捜査をしてくれるから大丈夫です」と言われる。

 竹本は黙秘を続け、17日間の拘留が続く。

 竹本は孤独だった。誰も面会にこない。自分の家族も同僚も友人も彼に会おうとはしなかった。彼の意志に憎悪が募る。

 拘留から19日目、再び殺人が起こる。竹本は釈放されるも全く腑に落ちなかった。

 アパートに帰ると松本はおらず、部屋は空っぽだった。大家は「10日ぐらい前に消えた。部屋に残っていたのは家具と男物の服と松本との記念写真だけ」と言われ、写真立てを渡される。憤慨した竹本はアパートを飛び出す。

 どこかで休み、落ち着くと会社に電話する。長期の無断欠勤が幸いして、解雇されていた。

 竹本にはもう何も残されてはいなかった。

 真犯人よりも、自分を裏切った周囲の人間が憎かった。

 そして、竹本は真犯人と社会に復讐をする方法を思いつく。猟奇殺人に便乗をして殺人を行うのだ。そうすれば自分が殺人を犯しても警察を眩ますことができるし、真犯人に対する挑発にもなる。その上、世間を恐怖のどん底に叩き込むことができる。もう失うものはない、社会が危険人物だと考えているのならそれになりきろう。

 竹本は人を殺す手筈を整える。

 昼に周囲を調査してから、夜殺す。

 最初の標的は定年間近の警官だった。制服姿でコンビニから出てきたところが目につき、刺殺する。死体にいかにも意味ありげな紋様を刻んだ。

 翌日、遺体は見つかり、メディアは騒ぎだす。竹本は笑う。殺人の味を覚え、次の標的を考える。

 そして、また人が死ぬ。今度は真犯人の犯行だ。前よりも残虐性を増した傷と派手な紋様を刻まれた遺体が現場に残されていた。

 警察は混乱する。犯人の大胆かつ、不特定に殺人は複数人の関与が認められるがそれを絞るのに苦労していたからだ。そのうえ目下、目星をつけていたのは宗教団体だった。

 あるスポーツ新聞は『現代のジャック・ザ・リッパ―』と見出しにかきたてる。

 竹本は相手が負けず嫌いで、情動に駆られやすい子供じみた奴だと考える。こちらも負けてはいられない。

 竹本はまた人を殺した。今度はもっと手の込んだ紋様を入れた。最初は警察をそらすためにいれていた紋様も意味を持ってきた。それを受けて相手もまた殺す。

 そんな日々がしばらくつづく。

 そのうち、竹本は犯人に会いたくなった。自分なりに犯人をプロファイリングする。

 まず真犯人が殺した人間には女性が多く、最初の犠牲者は女児であった。にもかかわらず、報道では強姦を仄めかす言葉が使われない。そして、犯人の背格好は竹本自身に似ているから、普通の男よりはそうとう背が小さいはずだ。しかし、それならば即座に警察は絞り込み逮捕していることだろう。

 もし犯人が女性だったら。その上、居住地を転々としても気づかれにくく、なおかつ生活が続けられるのは風俗業か水商売の女ではないか。風俗店を事件前後で辞め移動する、背が低めで、倒錯的女が犯人なのではないかと考えたのだ。      

 竹本はずさんな推理であることを自覚しつつも、いままで殺しをしてきた中で培った勘が「そうだ」と言ったのを信じ、調査を始める。

 竹本は店を事件前後で移動する、倒錯的女を探した。

 そして、ようやくマコトという源氏名の男装嬢を、普通の店では勤められないようないわば『地雷』を取り扱う『死球』という派遣型ヘルスで見つける。

 竹本はマコトこそが真犯人だと確信した。

 話を聞こうと、ラブホテルで客としてマコトと接触を試みる。そこには復讐の念はなく、同族意識というか親近感がわきあがった。が、話が切り出せない。

 結局、疑似性交の究極である〈素股〉でその回を終えてしまう。

 竹本は自分の不甲斐なさと満たされない欲求に葛藤し、野良猫を殺した。

 女がまた殺人をして、どこかへ行ってしまうまえに言いださなければ。竹本は焦るも、ためらう。彼女と会って話がしたい。

 竹本は指定の日時にマコトとホテルを予約する。

 当日、あまりに緊張をしてマコトに会う気を失いそうになる。

 なんとか自信をつけるために人を殺しにいく。が、無計画に行った殺人は失敗した。標的から傷を受けて、ラブホテルになんとか辿り着く。

 竹本はマコトと再会し、自分が模倣犯であると告げる。相手は驚かず、「自分もそうだ」と言う。

「便乗して人を殺した。その後に起きた殺人の何件かは確かに自分がやったのもあるが、覚えのないのもある」と。 

 しかし、そんなことは竹本にはどうでもよかった。ようやく、本当の自分を表すことができたのだ。

 二人は話し合った。自分たちが今まで感じていた不満、人を殺したときの感覚、どんな文様を死体に刻んでなにを表したかったか。互いに自らの考えや思いをさらけだした。二人は理解者をみつける。

 やがて、警察が周りを取り囲む。

 竹本はマコトのことは一切言わないと誓う。代わりに少しばかり二人だけで最後にゆっくりと過ごすことを提案する。

 外から声をかける警官に人質をとった振りをする。

 そして、二人は思う存分時間を過ごす。

 外ではマスコミと警察が大騒ぎしているのを見て、二人は笑った。

 満足した竹本は出頭することにした。マコトに感謝と別れを告げる。

部屋を出るとき、マコトは竹本の分まで人を殺し続けると言った。

 竹本は逮捕された。もっとも傷の治療のために病院に搬送されてからだが。

 数年後、竹本の死刑執行の日。檻のなかで、竹本はずっと紋様を描いていた。    刑務官と話す。 

竹本は刑務官からいまだに連続殺人が続いていること聞き、まだマコトが無事でいることを知り安堵する。

 竹本は悔いはないといい、死刑台にたつ。その死に顔は穏やかであった。

 それから数年後、ヘルス嬢高橋真子が交通事故死を起こすまで殺人は続いた。

 元祖殺人鬼の正体は謎に包まれたまま、幕は閉じる。        

 

・補足

 殺人鬼を表現者として捉えた。不満を抱えた主人公が表現の術を見つける物語を描こうとした。