dreamfact0ryのブログ

映画を勉強中。物置として使う。由来はプリンスの没アルバムから。

感想 『ミッドナイト・クロス』

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 ブライアン・デ・パルマの『ミッドナイト・クロス』が文句のつけどころのない、傑作という言葉よりも歴史に刻まれるべく大いなる宝であることをここに記す。

 まず、物語の構成が面白い。心臓の鼓動、荒い息。どうやら女子寮の庭にいるらしい、窓からはそれぞれの部屋でセックスしているカップル、下着姿で踊る女の子たち、勉強をしている女が見える。すると、警備員がいる。右手には刃物がある。背後に近寄ってからひと刺しにして、中へ入る。そこからもまた主観の長回しで、女学生たちの様子を盗み見る。誰を殺そうか? 『サイコ』のようにシャワールームへと歩く。女が身体を洗っている真っ最中だ。近づくと鏡に自分の姿を見る、眼鏡をかけている禿を散らかした用務員だ。再び生け贄に向かっていき、シャワーカーテンを開け、殺人者を見た女が絶叫をあげる。

「ひでぇ悲鳴だ」と笑う男。なんと今まで見ていたのはエクスプロイテ―ション(安物粗悪)映画だったのだ。ジョン・トラボルタ演じる彼の名はジャック、音響効果技師だ。

 この一連のシークエンスは『市民ケーン』のように自己言及的でかつ。これから始まる物語は血と精液に満ちた陰謀うずまく暗黒映画であることをほのめかしているのだ。

 また、デ・パルマは冒頭の安物映画に使っていたような長回しや主観といった技法を封じていて、これまでの自分との決別を示しているようにも思える。全てのカットがこれ見よがしではなく、効果的に画面を作りあげている。その精錬されたそのタッチは透明な極彩色を放っていると言っても過言ではなく、〈映像〉だけではなく作品の主題である〈音〉を堪能することは請け合いだ。

 本作がミケランジェロ・アントニオーニの『欲望』を下敷きしたと聞いている。アルジェントもまた『サスペリア パート2 紅い深淵』(書いているだけで腹が立つ邦題)を同作の影響下にあると言っていた。翌日、早速借りて見ようと思う。

感想 『ゲームの規則』

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  『ゲームの規則』。人生とは、愛とは遊戯に過ぎない。遊びには規則がある。守らなければ破綻を迎えてしまうから、主人であるロベールに資格を消され、退場させられる。機械仕掛けの玩具に執心するこの男こそが、最後までゲームを取り仕切っているのは偶然ではない。
 本作の登場人物たちは友情であるとか規範という規則に囚われたせいで、目的を達成することができない。ここでは平等にチャンスが与えられていて、なりふり構わず駒を進めれば愛を獲得できるはずなのに、この逆説はいったいなんなのだろうか。複雑だが単純な恋愛劇は、悲劇ともとれるし喜劇ともとれる。その言葉では語り尽くせない魅力に打ちのめされた。ポール・バーホベンが本作を意識して『elle』を撮ったというのもよくわかる。

感想 『ゴダールと女たち』

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  内容としては、ゴダールにとってのミューズたる女優たちの、経歴と作品への関わりをあっさりと纏めたものとなっている。
 そんなに役に立つものではなくて、オタクと学徒の書く文章に嫌気のさした著者の、天才ではあれど「思いつきで映画を撮る、癇癪持ちで金にうるさい男なのだ。彼の作品群のなかに統一性を見出すよりも、何よりも自己変革を求める不断にして強烈な意思を読み取ることの方が、はるかに重要であると判断したのである」という姿勢が面白いだけだった。しかし、そんなことは見ていてだいたいわかるし、作品を見ていないとさっぱり中国人(チンプンカンプン)。
 あとは「女は俺の成熟する場所だった」(原文ママ)と言った小林秀雄と、「ゴダールが女房に自己変革を迫ることによって逃げられ、自身が変革するというシステムは一種の才能である」(要約)という大島渚の引用が滋味深い。女運も才能であると繰り返すが、そうなると私はまったくの無能だ。

感想 『天国と地獄』

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 天国において奴隷たるよりは、地獄の支配者たる方がどれほどよいことか!ーー失楽園(ミルトン)
 煙を吐く煙突が並んだ工業都市・横浜。そこを見下ろすかのようにそびえる権藤の邸宅。『ブレードランナー』とも似たシークエンスから始まるこの『天国と地獄』は聖書をモチーフにしている。 悪役の竹内は「あの権藤の家が天国に見えた」と言う。これは傲慢や嫉妬によって堕天したと言われるルシファーと同じ動機だし、彼がみつかる決定打となるのは煙なのだ。悪魔は硫黄の煙とともにその姿を現すという。また、楽園から追い出される権藤も「飾りだけの重役より、1から出直した方がマシだ!」と叫び、これもジョン・ミルトン失楽園に通じる。
 そして、警察は竹内を追うためにどんどんダーティー・リアリズムに満ちた歓楽街からドヤ街、果てにはヘロイン窟にまで潜り込んでいく。画面のトーンがこれまで異常なくらい明るかった画面は一変して、フィルム・ノワールの世界へ様変わりしていく。まさに『天国と地獄』であり、本作が描いてるのは地獄めぐりに他ならない。
 そうした、西洋的で象徴的な作品でありつつ、あくまでもリアリズムに拘った奥行きのある画面と脚本が違和感を感じさせないところから黒澤明の並々ならぬ演出力を強く感じた。

感想 『ラ・ジュテ』

 『ラ・ジュテ』。連続したフリーズフレームが連続する写真動画で、ナレーションが付いている。一瞬だけ、動画として女性の目が開くところは斬新に思えた。

 また、未来描写を過去の素材である第二次大戦時の打ち壊された凱旋門や廃墟をつかったり、暗い地下道を利用したりをして滅びた文明を見事に表している。それに、そこにいる住人たちもレインコートに不思議なゴーグルだけという最低限の小道具だけで演出しているところにも感動を覚えた。さらに、はるか未来の場面になると、暗黒の空間に影のおりた白い顔が複数浮かぶところなんかも象徴的であるし、お金のかからない撮影法である。 これでもかというぐらい予算を抑えながらも未来の世界を描いた傑作だった。

 

  

感想 『非情の罠』


 スタンリー・キューブリックの『非情の罠』は難しい。撮影日数も予算も約7万5000ドルという中、1人で撮影・監督・編集・編集を勤める情熱には心打たれる。だが、画面からそうした熱は伝わらない。人だろうが物だろうが、アウラがない、機械的に納められているところがいかにもキューブリックらしい。淡々と撮っているから、そこら辺の早撮り職人監督に見えなくもなく、フィルム・ノワールという通常B級ジャンルを撮らせるとなんとも言えない退屈さを覚える。 反転ネガ一点透視法移動撮影だったり、鏡と窓だったり、レンズフレアだったり画面が割れたりするような挑戦が見られるも限られている。『現金に体を張れ』のように唸らさせるストーリーもテクニックもなくいから、ほとんど構図頼みになるわけだがそれもあまり見られたものではない。 それだけに、次作の『現金に体を張れ』の痛快さが
これだけ人件費を抑えているのだがら、もう少し舞台やエキストラを減らして安上がりに作る方法があったはずだ。コーマンだったらこの半額の予算で血と乳と殺しをもっと出してくれるだろう
スタンリー・キューブリックの『非情の罠』は難しい。撮影日数も予算も約7万5000ドルという中、1人で撮影・監督・編集・編集を勤める情熱には心打たれる。だが、画面からそうした熱は伝わらない。人だろうが物だろうが、アウラがない、機械的に納められているところがいかにもキューブリックらしい。淡々と撮っているから、そこら辺の早撮り職人監督に見えなくもなく、フィルム・ノワールという通常B級ジャンルを撮らせるとなんとも言えない退屈さを覚える。 反転ネガ一点透視法移動撮影だったり、鏡と窓だったり、レンズフレアだったり画面が割れたりするような挑戦が見られるも限られている。 『現金に体を張れ』のように唸らさせるストーリーもテクニックもないから、ほとんど構図頼みになるわけだがそれもあまり見られたものではない。

  これだけ人件費を抑えているのだがら、もう少し舞台やエキストラを減らして安上がりに作る方法があったはずだ。コーマンだったらこの半額の予算で血と乳と殺しをもっと出してくれるはずだ。なにせ、『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』は2万7000ドル(!)なんだし。あくまで習作といった感じか。

感想 『光る眼』

 カーペンターの『光る眼』が傑作過ぎた。スティーブン・キングまがいなホラーで、作り込みの浅さが目立ちながらも話が矢のように進んでいく。冒頭あたりの人々が倒れていく場面は生唾ものの演出力。それからの展開も力技だが突っ込むが追いつかないスピード感がある。
 全体的な見どころは光る眼によって、カーペンター流の派手で静かな死の描写が続くところ。箒を持った男が梯子を登って屋根の上に登る。すると、箒を胸に当てながら車の上に飛び降りてそのまま串刺しに。回りくどい割りに、あっさりとしている煮干しラーメンのような味わいだ。恐らく、編集が細かい時と緩やかな時の差が激しいのも関係していると思う。警官が互いに撃ち殺しあっても全然迫力を感じないあたりもカーペンターにしかだせない魅力的な場面だ。
 それにしても、30億円かけてこれぐらいのミニマルな作品を撮る手腕というのはいかようなものか。本当に素晴らしい監督だと思う。 後は全体的広角レンズの多用が目立ち、横移動もよくしていた。